人気ブログランキング | 話題のタグを見る

1973年から37年目の美声/YAMAKI F-20の枯れない味わい

おかげさまで商いをさせて頂いておりますが、売りたくないモノもあるんですよ。
たとえばこのギターもそう、自分のものにしたいんですが、笑。

1973年から37年目の美声/YAMAKI F-20の枯れない味わい_f0148098_19575796.jpg


メンテナンス後、気がついたら、昼ご飯も食べずにずっと弾きっぱなしでした。
YAMAKI F-20。 トリプル・オー/フォーク・タイプ

1973年から37年目の美声/YAMAKI F-20の枯れない味わい_f0148098_195815100.jpg


古いカタログを見ると、1973年のものに掲載されているだけで、その前後にはこの型番が見当たらないので、おおよそ1973年あたりの代物で、37年もののアコースティック・ギター。
制作過程から数えておよそ40年ほど経過したこのmade in japanのギター、ジャパン・ビンテージとよんでも過言ではない激鳴りで、強弱のレスポンス良く、ストレートに響いてきます。

「枯れた味わい」などというと、どこか終わってしまったようなニュアンスがありますが、この37年ものを弾いていて感じたのは、一般に言われる「枯れた味わい」というのはちょっと意味が違うなということ。

「枯れる」と「萎える」は違うし、「痩せる」とも違うし「渋い」とも違う。「悟る」とも違うし「大人しい」とも違う。「上品」でもなければ「滋味」とも違う。

このギター、確かに「枯れた」音なのですが、この「枯れた」のニュアンスは、「余計余分な雑味がなくて、適材適所適量に反応して、的確に音そのものを共鳴させる」といった具合です。

枯れる、つまり木が枯れる。
材料の木が37年の間に完全に乾ききって、また、音だけを的確にはじいて共鳴させる、そういう状態に「枯れている」のです。
余計な湿気、水分を含んでいると音ははじかれない。
37年間乾ききった木は、楽器として、音を共鳴させるためだけに的確に機能する状態になっているのです。
それが「枯れた」音。
萎えたり、悟ったり、老朽化したり、そういう意味合いじゃないんだなぁ、と感じさせてくれるのです。

枯れた味わい、というのは他のものにも人にも適用して使われるニュアンスですが、ボクも抽象的な「渋い」といったニュアンスで使っていたんですが、昼飯を喰うのも忘れてこのギターを弾いていてその意味はちがうのだなぁと感じたのでした。

雑味や雑念、余計な考えや余分な妄想、そういった今やっていることに必要のないノイズが省かれて、今やっていることをただひたすらクリアに共鳴させる、そういったことが「枯れた味わい」ということなんだと、このギターは教えてくれます。
決して高価ではなくごく普通のギターですが、さすが、37年もの!!

弱く爪弾けば弱く、強くはじけば強く、雑味やクセのない「枯れた」音で、激鳴りするんです。
楽器や家具、工芸品というものは、真面目で正直な生き物です。

1973年から37年目の美声/YAMAKI F-20の枯れない味わい_f0148098_19573180.jpg

1973年から37年目の美声/YAMAKI F-20の枯れない味わい_f0148098_19593629.jpg

YAMAKI F-20 1973年    24000。

掘り出し物・お宝といえば、こういうものがまさに掘り出し物でお宝。
経年でこの状態、めったに出会えません。しかも今はなき名社YAMAKI。

バブル経済以前の日本人の心、技、美意識、価値など、
昔の日本は、どのジャンルでもみんな丁寧な仕事をしていたんです。
そういう仕事・モノは一年の流行りモノで消えて無くなりはしないで、
行列が出来ることはなくても、結果的に未来に受け継がれていくのです。

何がイイとか悪いとかは未来が決めることで、今はあずかり知らぬことですから、
このギターの音色のように、丁寧に時を過ごして行きたいものです。
by greenwich-village | 2010-06-16 20:06 | もの・モノ

CD レコード 楽器 書籍 家具 器 インテリア ヴィンテージアイテム


by グリニッチ・ヴィレッジ