日曜日のケイジャン/もう一つのアメリカン・ルート・ミュージック

<米国深南部ルイジアナ州南西部フランス語圏のフォークロアから生れたケイジャン・ミュージック
担い手となった人たちはカナダのアケイディアからルイジアナへ強制的に移住させられたフランス系の人たちの末裔
フィドル、アコーディオンの陽気な調べとは裏腹に、悲しい運命を辿った人たちが奏でる音楽。
バイユーと呼ばれる湿地帯に孤立して農業・漁業を生業にしてきた人たち。
戦前から商業レコーディングされてきたケイジャン音楽は、彼らの土着の文化とアメリカナイズのふたつの間で揺れる地域社会の人々のメンタリティを映し出し続けている。>


アメリカの古いルート音楽といえば、一般的に、黒人のブルーズ系のものか白人のブルーグラス/カントリー系のものを思い浮かべると思います。
たしかに、アメリカが産んだ「ロックンロール」という音楽は、ざっくり言ってこの二つがぶつかり混ざり合って生成されたものです。

それ以外にも様々なルート音楽があるのですが、ここで紹介するのはケイジャンと呼ばれるフランス系アメリカ人たちが奏でる音楽。
言語はフランス語が多く、昨今のケイジャンでもフランス語が中心です。フランス語ですから明らかに地域のコミュニティ音楽で、全米ヒットなど望めるわけもありません。ルイジアナ深南部で、ひっそりと、というか、というよりも、自由勝手気ままに音楽を楽しんでいます。
ヒットばかりを気にする商業主義とははじめから縁がないのです。

バイユー湿地帯の同じ地域には、アコーディオンでブルーズを奏でて洗濯板でパーカッションをやる黒人音楽ザディコというものもあります。

ちょっと隣には、テキサス州のテックス・メックスというやはりアコーディオンなどを使うスタイルの音楽もあります。こちらはさらに南下して、メキシコ国境まで伸びていってメキシコ側でも親しまれているスタイルです。
ちなみに、テキサスはドイツ系の人たちが多く、メキシコは言うまでもなくスペインの血が混ざっています。
テックス・メックス/テキサス系のアコーディオンは、ドイツのポルカ音楽から来ているようです。

北上すると、ブルー・グラスやカントリー音楽。これはアイルランド/イギリス系で、唄い方などにはスイスのヨーデル・スタイルなども取り入れられています。
使用されるマンドリンという楽器は、イタリア系の人たちからのものだと思われます。
バンジョーという楽器はアイリッシュ音楽でも使われますが、逆輸入なのでしょうか、アフリカの太鼓とギターなどの弦楽器が混ざって出来たという説もあります。
バンジョーの胴の部分はドラムの小太鼓のように皮がはってありますから。

話が脱線しまくっていますが、つまりアメリカというのはヨーロッパ諸国とアフリカ系によって異種配合されて生成されてきている、ということを音楽によっても如実に感じ取れるのです。
大衆音楽であっても、ルート音楽ですから尚のことです。
(ヒスパニック系というラテン系の流入もありますが、ヒスパニックもそもそもスペインとアフリカと南米先住民の混合ですし、意味的に同じカテゴリーです)

さて、話を戻して、このケイジャンがまた独特の響きです。
フランス音楽でもなければ、カントリーでもブルーズでもない。アコーディオンやバイオリンを使っていてもヨーロッパ各国のジプシー音楽とも違う。
やはりケイジャン音楽としかいいようのないものなのです。
名もなき民衆のための音楽、貧しくとも人生を楽しむために奏でられた音楽。
ケイジャン、これもまたアメリカ音楽のひとつです。



LEO SOILEAU/レオ・ソレイユの1920年代に録音されたケイジャン音楽。
信頼のYAZOOレーベルから。
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ケイジャン音楽はいまでもちゃんと親しまれていて、よりモダンにコンテンポラリーに進化しています。
たとえばスティーヴ・ライリーなどは、かつてあのボブ・ディランもわざわざはるばるバイユーにまで彼を見に来るほど。
ライリーなどのコンテンポラリー・ケイジャン・サウンドを下敷きにして、ここ最近2、3作のディランの音楽とバンドの音はできているようです。
最近のディランのスタイルはそのサウンドとして、コンテンポラリー・ケイジャンのテイストをスパイスとしてミックスしています。
これは93年作ですからもう17年も前のアルバムですが、フレッシュなケイジャンが楽しめます。

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by greenwich-village | 2010-05-23 01:30 | 音楽

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