言葉の意味に囚われ過ぎると、音楽の表現や感受は窮屈になる

私はナザレへやって来た  もう半分死んだ状態で
横になれる場所が必要だ  「すいませんがどこか泊まれるところ知りませんか」
男に聞くと彼はにやっと笑い頭を振った  「知るもんか」ただそれだけ

ファニー  荷物をおろしなさい  自由の身になりなさい
ファニー  荷物をおろしなさい  私にその荷をよこしなさい

私はカバンを持って隠れる場所を探した 
カルメンと悪魔が連れ立って歩いているのを見たとき私は言った
「ねえカルメン  さあ街へ行こう」 
「行きたいけど  この人が私につきまとうのよ」と彼女は言った

ファニー  荷物をおろしなさい  自由の身になりなさい
ファニー  荷物をおろしなさい  私にその荷をよこしなさい

君の負けだ モーゼス 弁解できることなどありはしない
ルークのじいさんが最後の審判を待っている
「おい ルーク アンナ・リーはどうだ」
「後生だからここにいてアンナ・リーと付き合ってくれないか」と彼は言った

ファニー  荷物をおろしなさい  自由の身になりなさい
ファニー  荷物をおろしなさい  私にその荷をよこしなさい

狂ったチェスターが私の後を追ってきて霧の中で私を捕まえた
「私の犬のジャックを連れていってくれるならおまえの苦しみを拭い去ってやろう」
「ちょっと待てチェスター  私はいざこざは嫌いなんだ」と私は言った
すると彼は言った「いいだろう  じゃあできればこいつにえさをやってくれないか」と

ファニー  荷物をおろしなさい  自由の身になりなさい
ファニー  荷物をおろしなさい  私にその荷をよこしなさい

帰路に向かうように急行列車に乗る  私のカバンはずっしり重い
ファニーのところへ戻るときが来たとしか思えない
みんなに会わせるために私をここによこしたあの女のもとへ

ファニー  荷物をおろしなさい  自由の身になりなさい
ファニー  荷物をおろしなさい  私にその荷をよこしなさい


ザ・ウェイト  ザ・バンド/ソウル・ゴスペル・グループのステイプル・シンガーズと。




ザ・バンドはボブ・ディランのバック演奏を努めたバンド。  
カナダ出身ですがアメリカ南部の田舎の雰囲気を出すのが得意でした。

<ザ・ウェイト>は彼らの代表曲のひとつです。


知っているようで、知らない。
過去のオールド・ロックでもまだまだ知らないエピソードは数々ありまして、また、理解しているつもりの音楽でも不十分だったということも多々あります。
温故知新で、思いを新たにふたたび聴き返すのも音楽を聴く楽しみのひとつ。
こんなエピソードもあります。


難解と思われるような歌詞で、どこか意味ありげに謎めいています。 
モーゼ、ナザレ、ルカや「最後の審判」、これらは聖書からの言葉。けれどどれだけ読み込もうとしても意味が分からない。それで、いろいろな人がいろいろな解釈をしているようです。 
 
それ以降もそうですが、特に60~70年代のロック・ソングには意味不明の歌詞のものが多い。ビートルズはもちろん、ディランであれ、タネを明かせばナンセンス・ソング、なんて歌詞はたくさんある。

唄や声、ギターやドラムの音、アレンジやサウンド・エフェクト、楽器やおかしなヘンテコな表現、ロック音楽は理屈抜きの体感で、そういう風潮もありそれだからこそ流行ったということもあります。

作者であるザ・バンドのロビー・ロバートソン本人のインタヴューでも語っていますが、意味ありげな「ザ・ウェイト」という曲は、とくに深読みするほどの意味は何もないんだそうです。 

「人からものを頼まれてしまって、あるところに行かなくてはならなくて、あぁやだなぁ、しんどいなぁ」程度のもの。

ナザレはキリストの誕生地ではなく、マーチン・ギターの工場のあるペンシルバニア州の都市。

歌詞に出てくる人の名前の<Fanny>は、アメリカ俗語では「ケツ」、イギリス俗語では女性器を意味するということも加味すると、この代表曲「ザ・ウェイト」がそれほど“ことの重み”を重要視した警句曲ではないということが分かります。
メッセージ性など欠片もない。深遠な発想もあまり見られない。

曲調やアレンジのせいで、一般的には、特に日本人には、雄大なアメリカ・のんびりとしたカントリーな田舎の風景を連想させますが、ザ・バンドというグループは、そういうものとはけっこう無縁な質のバンド。
古き良きアメリカの、そういう音楽性や佇まいをクールに演出して見せたグループ。生業芸人的客観性。

ザ・バンドのほかの代表曲でも見受けられますが、ロビー・ロバートソンは、一見とても意味が深いような物語詞を書いているようで、その実、まったく何にも意味はないよォ~、という曲を書くのが上手な人のようです。 

本人いわく、「曲に詞をつけること自体意味がない」というのが彼の作風らしいです。

「歌に詞なんていらないくらいだね。詞にみんなバカみたいに気を使ってやっきになってるけど、オレはそういうのは好きじゃないな。連中の必死に書いた歌詞を読むと、どれもこれもなんだかバカらしい感じがするんだよ。自分の好きな曲の歌詞なんかを読んでみても、オレには、あぁまったくクソったれめって感じだね。」
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by greenwich-village | 2009-11-25 16:59 | 音楽

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