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「蒼氓」と「意味」

ブラジル移民を題材にした小説、第一回芥川賞受賞作品、石川達三の「蒼氓」。
「蒼氓」とは「無名の民。生い茂った草のごとく蒼きさすらう民」のこと

もう度々書いているので「またかぁ」と思う方もいると思うのですが、この小説と自身が置かれている状態(妻まりやの出産)から、山下達郎「蒼氓」という曲は生まれました。いつかインタビューで語っていたようにこの曲への思い入れは強く、ヒットシングルを集めたベスト盤「トレジャーズ」にも収録されています。
この曲は彼としてはとても地味めな曲ですが、オリジナルアルバム「僕の中の少年」のハイライトとなる一曲です。

こういう内容をこういうブログに書くのは適切かどうかといささか躊躇しますが、決してふざけたものではなく、書きとめておきたいと思うので書きます。
とても古くからの親友であるご兄弟のお母さんが急死お亡くなりになり、今夜お通夜でした。弟の彼は、数ヶ月前はじめての子供が生まれたばかりでした。人の「誕生」と「死」が一度に訪れたようです。

普段ボクたちは「死」ということをまったくと言っていいほど考えずに生きていて、自分はもちろん誰かが死ぬということを想像もしません。
死ばかりではなく「誕生」も、生まれたという喜びだけに「命」ということを見失ってしまいがちです。「命」があってはじめて「誕生」も「死」もあると思うのです。
命があって生きている、ということには毎瞬何かの意味が生じているはずです。その意味が、とくに「誕生」と「死」の時にはハッキリと認識できるので、人は心が震えるのだろうと思うのです。どんな人でも「誕生」と「死」は明らかな意味を提示します。

生まれて数ヶ月過ぎて初節句を迎える彼の娘を見て、彼らの亡き母親の写真に手を合わせて、お通夜の席から店に帰ってきました。
明日、新婚さんの新居に家具の配達があるので、その品物を手入れしています。
昨夜は、臨月でもうすぐ出産の友達夫婦が、生まれたら育児ゆりかご代わりに抱いて座れるようにとロッキンチェアを買っていきました。

新居で新しい生活をはじめる夫婦、もうすぐ生まれてくる子供と若い両親、ボクが作らせて頂いた雛台で初節句を迎える赤ちゃんと親友夫妻、彼ら兄弟、ボクにもいくつかの思い出がある亡き去っていく彼らのお母さん。
蒼氓、無名の民。生い茂った草のごとく蒼きさすらう民のボクたち
「誕生」と「死」ばかりではなく、「命あること」生きていることにはいつも「何かの意味」があると思うのです。
昨今の社会では多くの場面でネガティヴな空気が蔓延して、「意味」が見失われてしまっているように思えるのですが、それは見失っているだけで、「意味」がなくなってしまったわけではないと思うのです。

聴いたことがない方は、レンタルでもぜひ一度この曲を聴いてみてくださいね。

ボクが作った歌ではありませんが、この歌を、親友の亡きお母さんと、彼の娘と、彼ら兄弟に捧げたいと思います。

「蒼氓」  山下達郎

遠く翳る空から たそがれが舞い降りる
ちっぽけな街に生まれ 人混みの中を生きる
数知れぬ人々の 魂に届くように

凍りついた夜には ささやかな愛の歌を
吹きすさんだ風に怯え くじけそうな心へと
泣かないでこの道は 未来へと続いている

限りない命のすきまを やさしさは流れていくもの
生き続ける事の意味 誰よりも待ち望んでいたい

さみしさは琥珀となり ひそやかに輝き出す

憧れや名誉はいらない 華やかな夢も欲しくない
生き続ける事の意味 それだけを待ち望んでいたい
to find out the truth of life

たそがれが降りて来る 歌声が聴こえて来る 
by greenwich-village | 2008-03-02 00:00 | その他

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