2012年 07月 18日
街の涼しい夕暮れ時のハーモニカ/トゥーツ・シールマンス
トゥーツのハーモニカはどうしたって「街」なのです。しかもとてもクールで涼しげ。
ハーモニカはブルースやフォークやロックなどでも多く使われていますが、その場合どちらかというと熱く土臭い泥臭いフィーリングで、涼しげとは真逆なものになります。
涼しげな音色の楽器にはビブラフォン/鉄琴がありますが、ビブラフォンのクルンとしたその小粋な音色に対して、ハーモニカの音色には何かザラっとした哀愁が感じられます。
クールで涼しげで哀愁漂う音、ちょうど暑い暑い一日が終わり、涼しくなった夕刻の街の佇まいのような音色が、トゥーツが奏でるハーモニカの音。
老舗の蕎麦屋のシンプルで深いザルそばというか、老齢の名人の噺家のまくら小噺というか、O・ヘンリーの短編小説というか、オーダーメイドの上着の裏地というか、30年物のウィスキーというか。
子供たちでも簡単に親しめるハーモニカ。
どんな類の楽器でも、どんな類の道具でも、どんなものでも、その値段や仕様以上に、どんなふうに扱うか、どんなふうに接するか、どんなふうに奏でるかで「名器」になるのです。
酒とバラの日々 トゥーツ・シールマンス