夢はどこまでも高らかに響く/オリジナル・テクノロジー・テルミン

本質的な革新というのは、その後の数多ある応用の派手さや商業的成功はないが、刻み込まれた礎、穏やかに過激だ。


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ドキュメンタリー映画「テルミン」。

テルミン博士が作ったまったくオリジナルの電子楽器「テルミン」。これを見るまで、正直、効果音用とかおもちゃ楽器の類くらいにしか思っていなかったが、自分の無知さ、偏狭さ、見識の甘さでしかなくて、見事に心地よく覆された。
旧ソビエトのエジソンとも言われ、テレビジョンがない時代にすでにカラーテレビ/映像受信機のようなものまで発明していたという。電子楽器テルミンもそうだが、その発想たるや、まったく驚きであるとともに、基礎科学の重要性やオリジナリティーの大切さや革新性の真実など、学ぶところが多い。

いままで機械のひとつという認識だったが、これからはれっきとした素晴らしい楽器と呼ぼう。
テルミンという楽器は、楽器に触らない。そんな楽器はおよそこの世にテルミン以外存在しない。楽器は必ず肉体のどこかに接触して物理的な力が加わって音が出て、それらを肉体物理的にコントロールして音楽になる。これはその時点でまったく異なる。

電気楽器と言えば、エレキギターとかキーボード/シンセだとか、いまやパソコンでも自由自在で、世の中のPOP音楽はほどんど電気仕掛けで、普通に聴かれているようなヒット曲にはバック演奏すべて、歌さえもピッチシフトで調節して、丸々電気で作られているものが多い。
電気楽器や電子音を組み合わせて、テクノ音楽だと言い出したのが1975~80年のころ。日本だとかのYMOとかだ。

シンセサイザーという楽器を作ったのはムーグという人で、そのムーグが子供のころに圧倒的に影響を受けたのがテルミンだった。
シンセサイザー/のちの電子キーボードは、ピアノ的な従来の鍵盤がついているから、テルミンを使いやすく後退させた製品になる。これなら肉体的な接触があるから、旧来の認識からまったくはみ出さない。それで、多くのPOPミュージシャンがこぞって使い出して、あたりまえな電気鍵盤になった。それがさらに応用されていまのテクノロジー楽器やパソコン音楽になる。

テルミンの構造は複雑な基盤やソフト/データではなくて、いたってシンプルで、基本的に何本かの真空管を並べて増幅させたりしているだけだ。
そこがまた革新性の真実で、複雑で特殊だからと言って革新的なわけではなくて、むしろ複雑にするのは応用であって、コロンブスの卵のように革新性の本質はいつもシンプルだ。大切なのはあくまでも人間の脳みその中で、驚きと好奇心と発想。

テルミンそのものが本質的にまったく独立した楽器だが、すべての電気/電子楽器/エフェクト楽器は、テルミンが礎で、また、テルミンを越えていない。
今の時代よりも昔むかしのほうが、人間の感性や発想・創造性は豊かで進歩的・革新的・未来的であって、もはや人の感性は後退し衰退しかけているかもしれない。

テルミンは、さまざまなコンサートやカーネギーホールでもリサイタルを成功させるほど人々に人気で、現代音楽やテクノロジーものではなくて、むしろクラッシック古典を演奏した。
つまり、テルミンというものをそれまでの楽器と同等のものとして、新しいがひとつの楽器として扱ってもらうことを望んだようだ。

その音色は、中・低音はバイオリンやチェロのようで、高音域は女性オペラ歌手の歌声のように響く。

このクララさんは、テルミン博士の愛弟子でプロのテルミン奏者の第一人者。まるでオーケストラを指揮するような演奏、これがテルミン。
素晴らしすぎる!!







ないがしろにされた基礎科学。

派手で実利的な未完成な応用の最たるものが何なのかは、昨年さんざん味あわされた。今後死ぬまで、この無思慮で収拾がつかない素晴らしき応用の世界に付き合っていくしかない。


テルミンが初めてPOP音楽に使用されたもので且つもっとも有名な曲と言えば、ビーチボーイズの全米NO.1ヒット曲、「グッド・ヴァイブレーション」。
映画の中で、中心メンバーのブライアン・ウィルソンもテルミンを使ったこの曲に対して熱く語っている。


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by greenwich-village | 2012-02-24 10:44 | グリニッチ・ヴィレッジ

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