生活音すべてを取り込んでしまう音楽/アンビエント

車のエンジン、犬が吠える声、自転車のブレーキ、鳥の鳴き声、バイクが遠ざかる音、子供たちのしゃべり声、転がるボール、スケートボード、風鈴、風にざわめく木々の葉、台所の鍋やまな板、きしむ椅子、くしゃみ、冷蔵庫のモーター音、足音、雨音、虫の音、時計の秒針、ニュース番組、工事中、グラスに注ぐ飲み物、飛行機・・・・・。

その時々の偶然の生活音/ノイズさえ、サウンドのひとつとして取り込んでしまう音楽が、アンビエント。
アンビエント=アンビエンス=環境音。
BGMやただ静かなスローテンポの儚いメロディの曲、というものとは趣が違うのです。
流れている音と別のノイズが聞こえてきても、あたかも曲のアレンジかのようにそれさえ自然に曲に溶け込ませてしまう感覚。
生活のノイズが音楽として聞こえると同時に、アンビエント音楽も生活音が紛れ込んできてはじめて浮かび上がってくる。
それそのものはボンヤリとしていても、“場”に溶け込むことで非常に多面的・立体的・空間的に共鳴し、ですから、リスニングルームや静かな部屋、真夜中や美術館など向きのように思われますが、実は普段の生活の中でこそアンビエントはその味わいが増すのです。
川のせせらぎでも海の波音でも街の喧騒でも、音楽ではない音があってアンビエントも活きてくる。

ミュージック・フォー・エアポート、と題されたブライアン・イーノの名作アルバムは、飛行場という決して静かではない場所を想起してトリートメントされています。
ここで彼は、自身の役割をミュージシャンでもプロデューサーでもなくトリートメントと名づけています。アンビエントという音楽を作る環境を整え、それらのサウンドをより芳醇な方向へ調整する人、といったところでしょうか。ピアノ演奏は彼ではなくてロバート・ワイアット。

以降昨今、アンビエントは、静かなもの・ぼんやりとしたものとか癒し系的なものとか、テクノやクラブ音楽からリズムパートを抜いたシンセの上モノだけのサウンドだとか、リヴァーヴ/ディレイなどの空間系エフェクトをかけたものだとか、形骸化してアンビエントという言葉ばかりが使われて音楽が作られていますが、それらの音楽が環境音のノイズを混ざり合ってなお味わいが増すかどうか、といったところが、名前どおりのアンビエントか否かという聴き所になります。

月や星や太陽、雲や空や花など生活ノイズが聞こえないもの、ヘッドホンのように他のノイズを遮断するもの、クラッシックコンサートやフランス料理マナーのように意識して生活音を排除するもの、など他のノイズがなく音楽だけが独立してしまうと、アンビエント音楽の持ち味は半減してしまうかもしれません。

もっとも、睡眠中でもない限り、生活音・自然音がない環境など一般生活にはありませんが、笑。

外側があって内側があり、内側があって外側がある。それらは共鳴反響しあう。
アンビエント音楽は、ちょうど“禅”の精神に似ているように思えます。決して激しくはありませんがただ静かなだけでもありません。環境の雑音でもあるけれど環境に同化もする。意識もできれば無意識でもいられる。

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お好きな生活音を混ぜながらお聴きください。

ブライアン・イーノ    アンビエント


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by greenwich-village | 2010-09-18 17:35 | 音楽

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